いろんな節目があって、
そのたびに変わってきた10年だった

 2008年にTVアニメ『マクロスF』のランカ・リー役で声優デビューした中島 愛。“ランカ・リー=中島 愛”名義の「星間飛行」から始まったアーティストとしての10年を振り返って、彼女は「体感としてはアッという間でした」と語る。

「いつも目の前のことを一生懸命やってきて、気付いたら10年経ってたという感じですね。ただ、その間に自分自身もすごく変化していて。この前、8年くらい前の『マクロスF』のライブ映像を観る機会があったんですけど、“だいぶ別人だな”と思ってしまって(笑)。地続きで進んできたつもりだったけど、いろんな節目があって、そのたびに変わってきた10年だったと思います」

 デビューのきっかけは、2007年に行われたオーディション・Victor Vocal & Voice Audition。「5年間まったく芽が出ず、やっとの思いで掴んだチャンス」(中島)だったというが、当時はアーティストとしての将来像を明確に描けていなかった。

「それまでは何をやってもダメだったから、『マクロスF』が決まってからは、毎日が幸せすぎすぎました(笑)。ただ、私自身、将来的なビジョンはまったく見えてなかったんです。『星間飛行』を歌わせてもらった時も、“こういうことは2度とないかも”と思っていたし、ぜんぜん自信もなくて。それでも続けられたのは、『マクロスF』の劇場版が制作されたことですね。映画の後編はデビューの3年後(2011年)ということだったので、“まずはそれまで頑張ろう”と思いました。その後も危機感やプレッシャーはずっとありました。他の作品に出演する時も、毎回“これが最後かもしれないから、悔いを残さないように頑張ろう”という気持ちで臨んでいたので、目の前のことに全力を注ぐことで、ここまで続けてこられたのかもしれないです」

紫吹淳さんのステージを観て、
“もう1回、そこに戻ってみたい”と思うようになった。

 2009年のシングル「天使になりたい」で“中島 愛”名義の音楽活動がスタート。さらに「セイクリッドセブン」(藍羽ルリ)、「君のいる町」(枝葉柚希)、「ハピネスチャージプリキュア!」(愛乃めぐみ/キュアラブリー)などでヒロイン役をつとめるなど、声優としても順調にキャリアを重ねていた彼女。シーンを代表する声優アーティストとしても確実に支持を集めていたが、2014年にリリースされた3rdアルバム『Thank You』の後、大きな転機が訪れる。自らの意志で、音楽活動休止を決断したのだ。

「歌手としての自分の将来を上手くイメージできなかったんですよね。最初の1年くらいは少し音楽と距離を置いていたというか、新しい音楽を掘ることもしなかったし、ライブもほとんど行ってなくて……。でも、“そろそろ動いてみようかな”と思ってからは、いろんなライブや舞台を積極的に観るようになったんです。チケットを買って、一人で会場に行くのも楽しかったし、「これを仕事に活かそう」みたいなことは考えず、純粋な観客としてステージを観るのがすごく新鮮で。その頃は“誘われたら出来るだけ参加する”って決めてたんですよ。本来はそういうタイプではないんですけど、知らない人が多いごはん会も思い切って行ってみたり。新しい出会いも広がりましたね」

 活動休止中、最も興味を惹かれたのはミュージカル。特に「グッバイ・ガール」の紫吹淳のステージには、大きな刺激を受けたという。

「ライトが当たってない時も、紫吹さんが発光しているように見えて。舞台での立ち居振る舞い、ひとつひとつの仕草も素晴らしくて、本当に感激したんです。その頃は“舞台で光を浴びる人とは?”と考えていた時期なんですけど、ステージを観て、“私ももう1回、そこに戻ってみたい”と思うようになって。復帰に向けて、すごく勇気をもらいました」

私はどうやら引きが強いみたいです

 2017年、3年ぶりに音楽活動を再開した彼女は、翌年2月に4thアルバム『Curiosity』をリリース。“好奇心”というタイトル通り、自由奔放に広がった楽曲とともに、新たなスタイルを提示した。リスナーに対する意識も大きく変化したようだ。

「以前と違うところは、リスナーのみなさんの反応をしっかり感じていることかな。私自身が一人で歌っていても満たされるのであれば、ステージに戻ってくる必要はないと思うんです。私はそうじゃなくて、みなさんからのレスポンスを求めていたんですよね。“新曲、いいね”と言われるだけで嬉しいし、“ちょっと落ち込んでたけど、ライブに行って元気になりました”という声を聞くと“やってて良かったな”と思ったり。そういう当たり前のことにようやく気付けたんですよね。10年間で得られたものですか? やっぱり“出会い”には自信があります。支えてくれるスタッフ、楽曲を提供してくれる方、アニメ作品もそうですが、私はどうやら引きが強いみたいです。10年間、みなさんに気にかけてもらえているのは本当にありがたいですね」

インタビュー第2回
「中島 愛 ~これからの10年~」は
1月16日(水)掲載予定です。

撮影●藤城貴則
取材・文●森朋之
ヘアメイク●及川美紀(NICOLASHKA)