──2019年1月に歌手デビュー10周年を迎える中島 愛が、デビュー記念日の1月28日に初のカバーミニアルバムをリリースする。「ラブリー・タイム・トラベル」とタイトルされた本作でカバーされた楽曲は、「Kimono Beat」(松田聖子)、「青いスタスィオン」(河合その子)、「透明なオレンジ」(安田成美)、「雨にキッスの花束を」(今井美樹)、「無言のファルセット」(CoCo)、「真夜中のドア」(松原みき)、「時に愛は」(松本伊代)の全7曲。70年代後半〜90年代前半あたりの歌謡曲、アイドルポップスに造詣が深く、マニアックな音楽ラバーである彼女らしい、“ツウ”な選曲だ。しかも本作は、初のセルフ・プロデュース作品。彼女自身の音楽的なルーツに根差しつつ、良質なジャパニーズ・ポップスへと結びつけた充実の仕上がりである。

「最初からセルフプロデュースと決まっていたわけではないんです、じつは。10周年のご褒美みたいな感じで“いちばん好きな時代の曲を集めてカバーアルバムを作ろう”と提案してもらって、曲ごとにアレンジャーさんを立てて、その方の方針に沿って制作していきましょうということになり、まずは選曲をさせてもらったんです。デビューした頃から使っているiPodに1万曲くらい入っていて、それを聴き返しながら“どうしてこの曲が好きなのか”と理由を言える曲をピックアップして。曲を絞っていく段階で、“「Kimono Beat」はラスマス(・フェイバー)さんにアレンジしてもらったら、絶対いいだろうな”ということも浮かんできたから、ほかのアレンジャーさんのことも含めてスタッフのみなさんにお伝えしたら、“そこまで決まっているのなら、自分でプロデュースしたほうがいいのは?”ということになって。制作の途中で“プロデューサーなんだから、中島さんが決めてください”と言われたりもしました(笑)」

──本作に参加したアレンジャーは、ラスマス・フェイバー、tofubeats、金澤ダイスケ(フジファブリック)、Kai Takahashi(LUCKY TAPES)、そして、彼女のライブでバンマスを務める西脇辰弥。楽曲とアレンジャーの組み合わせの妙によって、原曲の新たな魅力をしっかりと引き出している。

「“この曲には、このアレンジャーさんがいいな”っていう趣味的な妄想が現実になったという感じです(笑)。カバーアルバムのキモはアレンジャーだし、それによって歌い方も変わってくると思うんですよ。全曲、お願いしたいアレンジャーさんに引き受けていただけたので、すごく嬉しいですね。以前から“編曲”を意識しながら音楽を聴くのが好きだったんですよ。編曲家で曲をまとめたりしてたんですけど、まさかそれが活かされる日がくるとは思わなかったです(笑)」

──彼女のプロデュース・センスがもっとも発揮された曲の一つが、「無言のファルセット」(with Negicco)だ。以前から交流のあるNegiccoがコーラスとして参加、1990年代前半の隠れた名曲をアップデートさせている。

「Negiccoさんに参加していただいたのは“私利私欲”と呼んでいます(笑)。もともと大好きなグループだし、CoCoさんの曲をカバーするんだったら、ぜひNeggicoさんにコーラスしてほしいなって。メンバーのみなさんの声、歌い方を自分なりに考慮して、パート割りも決めさせてもらいました。“90年代前半のアイドルの曲を知ってほしい”という気持ちもありましたね。よく“アイドル冬の時代”と言われるんですけど、“いい曲ばっかりだよ!”と伝えたいので」

──「ラブリー・タイム・トラベル」の魅力の中心はもちろん、中島 愛の歌。楽曲に対する深い理解、豊かな表現力が備わったボーカルからは、10周年を迎えた“シンガー・中島 愛”の充実ぶりが伝わってくる。

「ずっと聴いている曲ばかりだし、私のなかに沁みついているんですよね。特に松田聖子さん、河合その子さんの曲は、細かい歌い回しなども覚えていて。それを活かすのか、まったく違う歌い方をするのかはかなり考えたんですが、今回はできるだけ原曲の歌い方に沿ってみようと。初めてのカバーアルバムなので、楽曲、アーティストさん、作家さんへの愛情とリスペクトを込めたいなって。“こんなに聴いてきたし、大好きな曲だってことをわかって!”という感じです(笑)」

──中島 愛の音楽性、ボーカルスタイルを形成した80〜90年代の音楽をテーマにした本作。10周年のタイミングで、彼女のルーツを反映させた作品を発表することは、大きな意義を持つはずだ。

「自分のルーツを伝えたいという気持ちはすごくありますね。デビュー当時から“この時代の音楽が好きです”といろんな場所で言ってきたんですが、実際に歌うことによって伝わる愛情もあるのかなって。10周年の時期に、自分の理想通りのカバーアルバムを作れたことはすごく嬉しいし、まさに名刺代わりの1枚になりました。カバーだけど、“自分の人生そのもの”というアルバムですからね」

撮影●藤城貴則
取材・文●森朋之
ヘアメイク●及川美紀(NICOLASHKA)