──90年代のアニソンの思い出話から、現代のアニソンが、もしかしたら可能性を狭めているのではないかという話に広がっていった第3回。今回はまず、その続きを紹介するのだが、二人がどれだけ真剣に制作に向かい合っているのかが、分かっていただけると思う。

オーイシ
アニメ制作サイドが、主題歌を作品の内容に沿って作ってほしいというのは、すごく分かります。でも、それはずっと続くことじゃなくて、何かのきっかけで、作品とは独立した曲があってもいいんじゃないかという方向に向かっていくかもしれないですよね。要は、時代の流れの中で振り子のようにバランスを取っているような感じで。とは言え、僕らはその中にいて、自ら流れを作っていく立場なんだけど。

Tom-H@ck
つまりは、僕らのようなクリエーターが、今の状況に対してしっかり発言していくことが大事なんだと思います。それによって制作サイドだけでなく、ファンの人達のアニソンの捉え方にも、多少は影響を与えられるのかなと。結局は、楽曲がエンターテイメントとして、どれだけ昇華できているかということに尽きるんですよね。

オーイシ
いい曲を作っていきたいという気持ちは、もちろん一番大きいです。でも、僕は作品の内容を強く意識して作るタイプなので、今作っている曲は作品に寄り添いながらも自分の曲になっているのか、単に作品に迎合しているだけなのかというのは、悩みどころなんですよね。その両者は次元が違っていて、全部が全部、誰かの言いなりになって作るのは違うと思う。「あれ、迎合しているかもしれないな?」と思った時は、自分の中でアラート(警報)が鳴るんですよ。

Tom-H@ck
スタジオで作業していても、「これは違うかな」という要求が出ることがあるよね。そういう時、僕は言い方に気をつけつつ、はっきりと自分の意見を言うようにしています。

オーイシ
それは僕もそうだけど、時と場合によってはぐしゃぐしゃになる。以前、自分が思っていることと提案されたことにズレがあって、どう考えても自分の方が正しいと思った時、Tomくんにめっちゃ相談したよね。

Tom-H@ck
二人で箱根に旅行に行った時だよね。登山電車の中できれいな景色を見ながら、オーイシさんがずっと仕事の話をしてて(笑)。

オーイシ
自分の考えをどう先方に伝えたらいいか悩んでいて、せっかく前からスケジュールを取っていたのに旅行どころじゃなくなって。宿でも食事が喉を通りませんでした(笑)。

Tom-H@ck
オーイシさん、元気ねえなって思ってた(笑)。

オーイシ
でも、自分がアニソンの未来を切り開いていかなければ、なんていう使命感を持ってしまうと、逆に肩に力が入りすぎてしまうと思うんです。正直なところ、生活できればいいというのが第一だし(笑)。リラックスして100%のパフォーマンスが発揮できる環境を整えて、いいものを作っていけば、いろいろなものは付いてくると思っています。アニソンの未来を作るという使命は、自分には背負えないなと。

Tom-H@ck
やり方としてはそれが一番美しいと思う。

オーイシ
気づいたら後ろにきれいな道が出来ていた、というのがいいよね。

──まさにアニソン業界をサバイブしているという感の二人。今後、OxTは、どこに向かっていくのだろうか?

オーイシ
二人ともクリエーターとしては器用なタイプだとは思うんです。制作に入ったら、すごく早いしね。Tomくんは、アレンジ作業とか本当に早くて上手い。

Tom-H@ck
確かに最近どんどん早くなってきて、1曲3時間くらいでアレンジが完成します。

オーイシ
それでいて、こうきたかという驚きが毎回あって、「Tom-H@ckにはどれだけ引き出しがあるんや!」って(笑)。歳は僕の方が上ですけど、アニソンクリエーターとしては先輩なので、いつも勉強させていただいてます。

Tom-H@ck
オーイシさんには、僕にはないJ-POPでの経験があるので、お互いさまですね。それぞれの仕事をリスペクトし合っていて、楽曲を批判するようなことは全くないです。

オーイシ
ただし、それぞれの作品が同じ日にリリースされると、ランキングには目を光らせますね。たとえば、「ようこそジャパリパークへ」と、MYTH & ROIDの「JINGO JUNGLE」がそうだったんです(ともに2017年2月8日リリース)。ミスドは配信系のランキングが強くて、結局最後まで抜けなかった。

Tom-H@ck
「JINGO JUNGLE」が1位で、「ジャパリパーク」が2位ということがありました。それをオーイシさんがずっと言ってて、気にしすぎなんじゃねえかって思ったけど(笑)。

オーイシ
いやいや、数字は大事よ(笑)。僕らは曲を作って、順位が出る仕事をしているんだから。でも、Tomくんが僕の曲をよく誉めてくれるから、僕もちゃんとTomくんの曲の感想を言うようになりました。本音を言えば、自分以外のクリエーターがいい曲を作ると、すごい悔しいんだけど。

Tom-H@ck
そうなんだ(笑)。

オーイシ
そうやってそれぞれの活動で培ったものを、いいとこ取りしているのがOxTなんです。だから、第1回でも言ったように、力まずにできているんですよね。カロリーを消費することなく、二人で楽しいことをアニソン業界で見つけていくというユニットです。

Tom-H@ck
今年も二人して、いろいろなアニソンを作っていくことになると思います。たぶん、めっちゃ忙しくなると思う。OxTとしては、直近では4月からスタートする『ダイヤのA Act.2』があります。

オーイシ
何を担当するかはこれから発表になると思うんですけど、ただいま絶賛制作中です。また、『ダイヤ』ファミリーに戻るということで、意気込んでます。初心に返ると言えるほど、僕らはまだ歴史を残してないからね。とにかく今年もがんばっていかないと。

Tom-H@ck
そうそう、僕らがやることは、ただただいい曲を作り続けるだけです。

 インタビュー・構成=鈴木隆詩