──内田 彩が『ラブライブ!』で担当することになったキャラクターは、南ことり。1stシングル「僕らのLIVE 君とのLIFE」の歌録りから、『ラブライブ!』の仕事はスタートした。

「1枚の資料をいただいただけで、最初はどんなキャラクター性を持った子なのか分からなかったんです。まだ演じたこともないのに、その子として歌を歌うのが不思議というか、バックボーンがない分、自分のやりようによっては間違った方向に転がっていってしまうような気がしたんです。責任重大というか、ことりちゃんと一蓮托生だなと思って、不安もありましたけど、すごくワクワクしました」

──まずやったのは、『電撃G's magazine』の記事を読み漁ることだった。

「こんな考え方をするんだ、こういうことが好きなんだって、ことりちゃんのことを知っていって、それを声に落とし込んでいくんです。キャラクターに肉付けしていくのは全部自分だったので、ことりちゃんとの二人三脚感が強かったですね。それと同時に、2ndシングルのセンターポジションを選ぶ総選挙が始まって、メンバーが9人しかいないのに、始まったばかりで順位がついちゃうんだと思うと、胸が痛みました。1stシングルは9人全員で歌うので、ことりちゃんをどうやって表現していこう、どうやったらファンのみなさんにこの子に気づいてもらえるだろうって考えて、9人の中に埋もれないように独特な声を出していこうと思いました。『ラブライブ!』に参加できたことが本当に嬉しかったので、スタート時の私の熱量はすごかったと思います」

──聴いてくれる人の耳に少しでも引っかかる歌声を意識したので、どんどんことりの歌は個性が強くなっていったという。

「私がそれまでのキャラクターソングで培ってきたものを全部乗せした感じです。そうなったのは、キャラクターの歌い方をセルフディレクションできた『ラブライブ!』という作品の特性でもあるし、総選挙を意識したからというもあって。ことりちゃんについては、考えて考え抜きました。それがすごく楽しかったんです」

──そして、キャラクターと同じように、現実でも歌って踊る企画が立ち上がる。

「正直、最初に聞いた時は、『本当にやるんだ。本当にやれるのかな?』と不安もありました。でも、新しいことをみんなで始めていく期待とワクワクがそれ以上に大きくて。私達が先陣になってやるぞ! という気持ちでした。初めてのイベントの時は、誰も来なかったからどうしようと思っていたんですけど、たくさんの人が来てくださって本当に嬉しかったです」

──この時も、『ラブライブ!』の可能性を、『シスター・プリンセス』と重ね合わせていたという。

「私は『シスプリ』がアニメ化された時からのファンなので、企画が始まった当初から追いかけている人のことをすごいなって尊敬していたんです。『ラブライブ!』もこの先大きくなって、最初から応援してくれていたファンの方々が誇れるようなコンテンツになっていったらいいなと思っています。実際に『ラブライブ!』もアニメ化で一気に広がって、やがて、私がまったく想像できなかったような場所までたどり着いていきました」

──内田自身は、もともと表舞台に出たいタイプではなかったという。

「『ラブライブ!』は、世間に知られるごとに現実のアイドルのような捉え方をされるようになっていって。私はあくまで声優としての活動だと思っていたので、葛藤することが何度もありました。だけど今振り返ると、そんな気持ちも全部ひっくるめて、楽しめていたなと思います。それにμ’sのライブを続けることによって、声優としてのお芝居に返ってくるものもたくさんありました」

──『ラブライブ!』は確実に、声優という仕事の新たな可能性を打ち立てた。内田彩の声優としての10年は、その前の作品からずっと、キャラソンとともにあったことになる。

「普通の歌とは違って、キャラクターを演じているからこそできる表現があるのがキャラソンです。同じ歌詞、同じメロディを歌うにしても、キャラクター性によって歌詞の捉え方も歌い方も、全然違ってくるんです。最初は『キャラクターが歌を歌うって、どういうこと?』って思って(笑)。どういう設定で、この子は歌を歌わなきゃいけないの? って思いがあったりもしたんですけど、やってみると、一つ一つ自分なりに解釈していくのが面白くて。このキャラクターだったら、のびのびと歌うだろうなとか、このキャラクターは歌うこと自体あまり好きじゃないかもなとか、想像しながら歌を作っていくのは、楽しいですね」

──実際に歌うのは内田自身だが、歌と歌い手の間にキャラクターがいる。

「女の子がたくさん出てくるような作品だと、劇中で心情を掘り下げてもらえるキャラクターばかりじゃないので、この子はこんな思いでいるんだということを表現できるのは、キャラソンだけだったりするんです。私はやっぱり演じることが一番好きなので、歌うことでその子を演じきれるのが嬉しくて。セリフの延長線上にあるのが、キャラソンだと思っています」

──キャラソンが大好きだという内田。その思いが結実したのが、昨年11月に開催された「AYA UCHIDA CHARACTER SONG LIVE『〜chara・melt・room〜』」だった。次回最終回は、キャラソンライブへの思いを存分に語っていただきます。

インタビュー第4回
「キャラソンは私の帰る場所です」は
5月29日(水)掲載予定です。

インタビュー・構成=鈴木隆詩