──大橋彩香の声優としての初仕事は2012年。TVアニメ『アマガミSS+ plus』だった。どのような現場だったのだろうか?

「同じ事務所の木戸衣吹ちゃんと一緒に、モブ(キャラ名のない役)として現場に行きました。それまで一度だけアフレコを見学させていただいたことはあったんですけど、レッスンは全く受けていない状態での初仕事だったので、ボロボロだった記憶しかないですね(笑)。モブなのに一番時間がかかってるみたいな感じになって、優しく接してくださった先輩方に迷惑ばかりおかけしてしまいました。家に帰った後で、「もうどこにも呼んでもらえない、終わった、私」とお風呂に浸かりながらめちゃくちゃ落ち込こんだので、同じ年に、『エウレカセブンAO』のオーディションに受かった時は、本当に嬉しかったです」

──『エウレカセブンAO』のフレア・ブラン役が、TVアニメの最初のレギュラーとなった。

「大好きなロボットアニメで、しかも2クールもので、音響監督の若林(和弘)さんにアフレコのイロハを教えていただきました。初めてレギュラーの役をいただいた作品で若林さんにお世話になれたのは、自分にとって大きかったと思います」

──デビュー直後の作品で、特に印象に残っているのが、この『エウレカセブンAO』と『アイカツ!』での紫吹蘭役だという。

「『アイカツ!』では、菊田(浩巳/音響監督)さんに鍛えていただきました。『エウレカセブンAO』と合わせて、声優としてのお芝居の基本を身につけることができて、自分にとっては欠かせない作品です。それから『てぐされ!部活もの』(田中心春役)ではアドリブ力を鍛えられ、『ドキドキ!プリキュア』では、ランスという妖精役をやらせていただいて、人間じゃないキャラクターを1年にわたって演じることができたのもよかったと思います。デビューからの2年間で、いろいろな役にチャレンジすることができました」

──それ以降も、作品ごとに新たな挑戦があった。

「『さばげぶっ』では主人公の園川モモカという、ある意味ゲスい役をいただいて、『アカメが斬る!』ではクロメという敵役に初挑戦して、劇中で死ぬというのも初めてでした。振り返ってみると、劇中で死んだり、めちゃくちゃ病んだりする役が多いんです。そういう役のほうが、自分の性格と合っているのかもなって思います(笑)」

──アクの強い役を任せられるということは、彼女なら振り切った演技をしてくれるという制作者側の期待の表れなのだろう。そして、2014年になるとアーティストデビューの話が立ち上がる。

「アーティストデビューしてみませんか?』と言われたのではなく、8月6日にデビューしますという決定事項を知らされたので、最初は喜びよりも戸惑いの方が大きかったです。アーティスト活動をやりたくないということではなく、デビューできるほどの実力がないのに大丈夫かなという不安ですね。ランティスさんに損害を出してしまうんじゃないかとか、ネガティブなことばかり考えてしまいました(笑)」

──不安だらけのアーティストデビューだったが、活動していく中で少しずつ自信が持てるようになっていった。

「5年やってきて、あのとき、アーティスト活動を始められてよかったなと思っています。声優にはキャラソンは付きものですし、アーティストとして歌っている曲も芝居に近いところがあるので、どちらの活動にも相乗効果が出ていて。たとえば、『イカはイカすぜ☆クラーケン子ちゃん』(7thシングル『NOISY LOVE POWER☆』収録)という曲は早口言葉やセリフが曲中に入ってくるので、レコーディングしていて声優をやっていてよかったなって実感しました。ライブで披露したら、ものすごく盛り上がったので、これからも歌い続けていく曲になりそうです」

──ライブでのファンの盛り上がりも、アーティストとして自信を持てるようになったきっかけの一つだ。

「1stライブのステージに立つ前は、歌詞を間違えたらどうしようって、心が締めつけられていました。でも、みんながすごく楽しそうにしているのを直に見て、ライブは完璧に成し遂げることも大事だけど、それ以上にみんなと一緒にいる喜びを表現することが大事なんだなって気づきました。まずは自分がめいっぱいライブを楽しんで、それが届くことでみんなもにっこりしてくれるのがいいなって。そう思うことによって力みが抜けて、逆にミスも減っていきました」

──1stライブ「Start Up!」に続く、初のライブツアー「OVERSTEP!!」で、自分なりのライブの感触をしっかり掴むことができた。

「全部で5公演あって、毎週末、日本のどこかに行って同じセトリのライブをしたことで、ライブに対する考え方がまた変わりました。同じ曲を歌っていても会場ごとに反応が変わってくるし、MCも違いを見せたいなと思って、しゃべることを変えて。それを5回繰り返すことで鍛えられました」

──アーティスト活動以外でも、各作品のイベントでキャラソンを歌い、大きな会場でのライブを経験してきた彼女。『BanG Dream!』から生まれた女性声優バンドPoppin' Partyでは、ドラムを担当している。

「ドラムはもともとやっていたんですが、まさか仕事になるとは思わなかったです。声優になる前に、バンドを組みたいという夢もあったので、それが叶いました。ソロ活動があって、コンテンツ系のライブもあって、バンドもやって、声優の仕事もあって、『そんなに忙しくて大丈夫?』ってよく聞かれるんですけど、一つ一つハードルを越えていくのが楽しいんですね。それに、予定がびっしり詰まっているほうが、性格的にも合っているんです」

──どんなに忙しくても、健康を保っているのもすごい。

「平日は声優のお仕事、週末はアーティストという生活に慣れていなかった頃は、毎年同じ時期に思いっきり体調を崩すのが恒例になっていました。でも今は1年中健康で、風邪をひくこともなくて、みんなからは鉄人と呼ばれています(笑)。5周年を迎え、アーティストと声優の両立には、だいぶ慣れてきました」

──5周年の重みを感じた第3回インタビュー。次回はいよいよ、新曲「ダイスキ。」について語ってもらおう。

インタビュー第4回
「新曲『ダイスキ。』は、かわいいダンスナンバーになりました」は
7月24日(水)掲載予定です。

インタビュー・構成=鈴木隆詩

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